みをつくし料理帖とバックトゥザフューチャー

このエッセイは,高田郁(たかだ かおる)とロバートゼメキスとボブ・ゲイルについて書くというわけです。物語の脚本の話です。好きな小説と映画の話です。

僕は映画も小説も物語は基本的に好きなのですが,特に脚本に惹かれている時は本当に幸せを感じます。ですので,淡々と美しい,とか,どんどんと激しい,とか,驚愕のCG,とか悪くないんですが,そういう場合特に引き込まれることもなく「ああそうなんだ」で終わってしまいます。

僕の好む脚本を説明しようとしたら,縦軸と横軸がしっかりかみ合った脚本,と話すことが多いです。縦軸は,その物語独特の世界のことです。みをつくし料理帖なら料理というテーマ,バックトゥザフューチャーならタイムトラベルというテーマのことです。そして横軸は,人間関係です。

料理の話なら,引き込まれる料理情報がある程度しっかりと含まれていないと面白さは半減します。誰でも知ってるようなことではなくて,なおかつ,あまりにも専門的すぎて難しくならないような事実がそれなりに組み込まれていれば,縦軸は安定します。そして肝心な横軸は人間関係です。それぞれの登場人物に性格や背景がしっかりと設定してあって,矛盾なく人が生きていれば,横軸も成功します。どんな人物を出すのかは問題にはなりません。それぞれがリアリティのある人間味を出していれば,どんな展開になっても人の共感を呼ぶことはできるのです。

バックトゥザフューチャー,僕はこの映画が大好きです。主人公のマーティを取り巻く人たちとの人間関係が本当によくできています。そして,タイムトラベルというテーマの扱い方も実に見事です。

バックトゥザフューチャーって,第一作は,マーティと家族の話だと思うんですね。特に,父への尊敬っていう角度が好きでしてね。最後にかっこいいお父さんが出てくるわけですけど,これって本当誰でも最高に嬉しいことなんじゃないかな。別にお金持ちであってくれとかそういうことじゃなくて,尊敬できることのうれしさ,これを最高に素晴らしく表現した脚本だなぁと,そう思います。

第二作と第三作は続けて見ないと意味があまりないと思うんですが(そもそも同時に製作されていて,長いゆえに分けただけですから),この2&3は,家族の話ではなく,ドクとの友情っていう角度に変わっていくんですよね。この年齢の離れた二人が惹きあって,男同士の友情を作っていく,これは本当に泣けるんですね。お互いに家族を作っていくという人生の変化と向き合いながら,相手の生き方を尊重しながらも深い絆で結ばれていくというこの胸を打つ関係を描いてくれたお二人,ロバートゼメキスとボブ・ゲイルに心からの拍手を送りたいというわけなのです。あきらめないで映画を作ろうと頑張り続けてくれて本当によかった。(そしてバックトゥザフューチャーのトリロジーBlu-ray BOXを貸してくれた友人にも感謝です。←こんなに好きなら買えばいいのにね)

さてさて,もう一方のみをつくし料理帖ですが,これはとある人のブログを読んでいたらやたら面白いと書いていまして,どれどれとネットの評判を読んでいたら気になるようになってしまいました。特に気になった書き込みは,「これはガラスの仮面のマヤちゃんの料理版だ」と書いていた人がいまして,「そりゃ気になるよ」と思うようになった次第なのです。ガラスの仮面,面白いよね。はまりすぎて日常を破壊するから時間に余裕がある時にまとめ読みをお勧めします。男性でもかなりの確率でのめり込むことになると思います。吹き出しの文章量が多いから,それは流し読みでね。

この小説作者の高田郁さんは,調べてみたら少女マンガの原作・脚本をもともと作っていた人とのことで,それはとても納得でした。小説の内容はベタな人情ものなんだけど,江戸時代という設定も活かして,本当に引き込まれる料理人の成長物語を描いておられます。これ読んでいると,お腹は空くわ,料理はしたくなるわ,泣けるわと,とても影響力が大きいです。現在進行形で発行が続いているというのも嬉しい話です。種市が[はふはふ]いいながら,頬をゆるめて目を見開いて「うまいよぅ」って言ってるのが最近目に浮かびます。見たこともないのにね。

上手な脚本を作るってことから連想するのは,以前ネットで読んだ,「手塚治虫のプロットの練習」というものです。その人が今何をする,というのを決めたとして,それは,過去にこうだったから,ゆえに,その過去はこうだった,だと,この過去はこうだったかもしれない,とどんどんどんどん過去をたどっていって,可能性がある分岐もさせて,その人の過去を定めていくっていうのがありました。なるほどなぁ,と思いました。登場人物の過去が決まってくると,これからどう動かせばいいのか決まってくるというわけです。大まかな脚本の要旨を周到に準備したうえで,少しずつ物語に落とし込んでいくわけですね。

きっと,みをつくし料理帖やバックトゥザフューチャーって,そうやって脚本をしっかり作ったからこそ,引き込む力を持っているんだろうなって思います。そこにかけた時間が短かったり浅いと,それ相応の脚本が出来上がるんでしょうね。

そうだ,みをつくし料理帖の次を買わなくちゃ。昨日ようやく3巻が終わったところです。この小説は,文庫描き下ろしってのもいいよね。ハードカバーだと,重いわ高いわで,どれだけ評判が良くても買う気が起こらないもの。勝間和代氏はiPadで読むのがやたら好きみたいだけど,iPadはまだまだ文庫より重い。あと,ベッドでごろごろと寝る前に読書をするのにiPadでバックライトって目が冴えそう。紙の良さってあるよねぇ。電子ペーパーみたいな薄くて軽いモノにならないとダメだと思うんですが。そこにPDFを放り込めて気持ちのよいビューアーが出てくれば売れるでしょうね。そうしたらみんな家にScanSnap買って紙はみんなPDFにして捨てられるようになるかもね。早い所どこかがやってくれないかなぁ。googleとかどうだろう。またappleから出て売れまくるのはもうやめて欲しいなぁ。jobsももういないわけだし。

というわけで,hrdtksはみをつくし料理帖の活躍を応援しています。←1円も払ってないけどスポンサーみたいに書いてみた(文庫はちゃんと新品を本屋さんで購入している)