脳が雇う社員

茂木さんがTVで「脳の情報は生きているんです」と話しているのを聞いた時に、とても不思議な気持ちになりました。この気持ちはなんだろう?そして思案を続けていく間に気が付いたことがあったのでまとめておきたいと思います。
脳を例えるのに、よく図書館の本が用いられます。引き出しにしまわれた情報という言い方がされることもしばしばあります。これが今までの脳に対する見方を固定していた影響源でした。そのせいで私は脳の中に、分類された機能があるものだと思い込んできたのです。記憶する部分と、考える部分と、感じる部分というような分業です。記憶された情報は、呼び出されるまでは静的だと思い込んできました。
しかしこの言われたことが本当だとすると、静的だと思っていた情報は何と生きている、ということです。いわば情報を脳が覚えるのではなく、情報が脳に住んで活動するということです。いや、もっと分かりやすい例えは、自分の脳という会社が情報という社員を雇うようなものではないかと考えました。
これは強烈なパラダイムシフトです。私は必要に応じてネットで検索して読むことと脳の記憶から情報を取り出すことは同じようなことだと思い込んできました。しかしこの考え方に沿うとすると、ネットに存在している情報は脳の中に雇っていない、つまり脳が働いて生産性を上げるために全く役に立っていないことになります。脳の中で、みんなを引っ張りまとめあげていく大事な社員がコマ不足になっているのかもしれません。そして、有害な情報を脳に入れた瞬間、それはグータラ悪影響社員を雇いこんで企業体質を悪化させることになると感じたのです。
私の脳という会社が健全な活動を続けるために、悪影響社員を雇わないように注意したいと思います。そして、いつでも雇えるからとほったらかしてきた、健全な社員達を大量に雇うことが目下の課題です。これには時間がかかることでしょう。
社長として行うことは、人事部を強化すること、そして、会社の方向性を見失わないこと。与えられた脳を正しく用いていくために必須なスキルだと認識を改める機会となりました。

当たるな砕けるな

いつものラーメン屋のランチが混んでいる。私は先輩に冗談半分で「このアンケート用紙に、厨房で料理している人が一人の時に待たされて困る、いつもは二人なのに、って書いておきましょうかねぇ」と言った。
先輩は真面目に「そんな所に書いても無駄だよ。本当に変えさせようとしたら保健所辺りに調査を依頼するほうが可能性が高い。アンケートなんてもみ消されるだけだから」と答えた。
私は一旦ふーん、と思った。その後、教訓がひらめいた。当たって砕けるのは悪いことではないが、策略としては程度があまりにも低すぎるんだな、と。人が動く簡単な考え方として「何もしなきゃ何も変わらない、まずは当たって砕けろ、当たる前に砕けるな!だ」というのを知っている。私も影響を受けている。
悪くはない。悪くはないんだ。が、TVで納豆ダイエットが放映されて次の日に納豆を大量に買うぐらい、これは単純すぎる行動だ。本当に実現したいことがあるなら、もう少し考えてから動く必要がある。
組織の中にいれば常に、変化を求める部分があって当然といえる。環境を向上させたい、周りの人間の能力を変えたい、規律を変えたい、雰囲気を変えたい、ごく当たり前。そのために何を考えるのがセオリーなんだろうか?
当たって砕けろでは、うまくいく可能性は限りなく低い。もう少し厳しく書くと、本当に変える気持ちがないと誤解されるぐらいだ。上司に直談判というのはかなり幼稚な手だ。相手も困惑するし、自分もその後に悪影響が出やすい。そりゃそうだ、自分が部下から「もっと仕事してください」と言われたことを想像すればいい。結果は見えている。だが、そこを考えることがなかなかできず、当たって砕けちまうのも実際よくあることだ。
まずは一番変化させやすい所から手をつける。それは大抵自分の意見だろう。洞察力をバージョンアップして、変化させたいという気持ちを抑える。本当に変化が必要で、動機も純粋な良いものであるならば、変化させるための最良策を練ることが求められるだろう。
最良策の候補に上がってくるのは大抵、上司に気づかせる、上司が自分がひらめいたかのように状況を作り上げることになる。気づかせるための情報をどうやって上司にインプットしていくか。他の人が言っていたことを伝える、他の人から伝わるように仕向けるなどがある。
まさに当たるな砕けるなこそ策の基本といえる。これに気が付くまで私は相当砕けまくってきた。哀れ。