パスタ作りとラ・ベットラの落合さん

美味しいパスタ。テンション上がります。

僕が料理をするようになったのは,実家を出てからでした。ご飯を炊いて,味噌汁を作って,魚を焼いて,実家のような基本的な和食に挑戦したものです。結果,あっという間に料理が嫌いになりました。食器が多く洗い物は多い,ご飯が炊けるまで時間はかかる,それほど美味しいものが作れない,三重苦です。まぁ,親に頼りきりだったのが元凶でしたが。

そんなぶつぶつ言っていたら,友人がウチに来て,ご飯を作ってくれた。ご飯と言っても,スパゲッティ。それは,パスタと呼ぶらしい。新しい文化の到来でした。いや,もちろんスパゲッティは知ってましたよ。その,ミートソースとか,和風きのことか,ナポリタン,明太子。それらは知ってました。けれども,特別好きとかではなく,時々お昼に食べる「スパゲッティ」でした。

それが大きく変化しました。夕飯に食べる,トマトソースの「パスタ」。こりゃ美味しい。「イタリア人って,美味しいもの食べる文化がすごいんだよ。手間をできるだけ省いて,簡単なのに,とても美味しいものが沢山ある。」という意味のことを教えてもらいました。これは転機でした。

フライパンと深いお鍋だけで作れるし,盛り付けもお皿が一枚。手間が省かれるのに,美味しい。簡単な日本食ではたどり着けない所に,イタリアンだからこそたどり着いていることが何となく分かるようになり始めました。

例えば,ご飯+トマト+ツナが食事として出てきたら,(無理やりパスタの組み合わせを和食としてやってみたら),まず,美味しいものにはならない。しかし,ツナトマトのパスタなら,成立する。しかも,かなり美味しい。

同じように,ご飯+キャベツ+ベーコンを食事にするのは何とも味気ないけど,キャベツベーコンのペペロンチーノなら,成立する。美味い。

さらに,パスタを茹で上げる時間とご飯を炊き上げる時間を比較すると,圧倒的にパスタの方が早い。

というわけで,基本の日本食で抱いていた三重苦を軽く解決してくれました。片付けが楽,早い,美味しい,すべてをイタリアンがクリアしたのです。美味しいパスタに出会えたきっかけ,その友人のレシピとコツの伝授に感謝しています。僕はそれ以来,何かあるたびにパスタを作り続けてきました。(最近,ついに日本食にも目覚めはじめたのですが,それはまた別で書くことにします)

そのイタリアンを教えてくれた友人が話していたイタリアンキーパーソンが,ラ・ベットラの落合さんでした。その人のレシピを参考にしているとのことで,さっそく僕も影響を受けてその時は買って読んだりしていました。最近はその本はずっとほったらかしにしているけど,落合さんの印象だけはとても強く残っていました。

ここ数年,いくらかお店でイタリアンを食べました。僕もそんな年齢になったのです。もちろん行きましたよラ・ベットラにも。世の中のグルメな人たちには全くかないませんが,僕が行ったイタリアンの中で,群を抜いてラ・ベットラが美味しいです。ランチだけだったけど,本当に幸福な体験ができました。いつか予約して夜もチャレンジしてみたいものです。

落合さんは,どうやったら日本人が美味しいと感じるイタリアンが作れるのか,探求してきたのだと思います。その理由は,「本格イタリアン」は,決して美味しいものではなかった,という事実があるからです。僕も分かるようになりました。日本でも「本格イタリアン」を食べさせるお店があります。それを美味しいと思えなかったからです。イタリア人の文化の中で成立している美味しさと,日本人文化の中で感動する美味しさは微妙に違うのです。

すごく簡単に言うと,本格イタリアンは,ちょっとしょっぱくて,ちょっとしつこい。そして,お腹を壊すことが多い。対して日本人が美味しいイタリアンは,塩加減が絶妙,そして,出汁の味がする。

ずいぶんと大雑把な表現になってしまったけれども,僕が本当に思っていることはそういうことです。例えば,ミートソースの最後に醤油を入れると,ばちっと美味しさが決まる感じというのは,日本人だからこそ味わえるのと思うのです。

ちなみに,「絶妙な塩加減」,これが,パスタを決める肝心の要所です。もしこれを読んでいる人がまだパスタを作ったことがないなら,これに気づくかどうかでパスタ作りが楽しくなるかどうかがぱっくりと分かれます。絶対に大切にして下さい。

塩味が薄いと,絶対に美味しくありません。どんなに良い食材でもダメなんです。なんだかあっさりしすぎた味というのは,もう一度食べたくならない定番の失敗です。

逆に塩味が濃すぎると,ちょっと食べててつらいです。なんだか残念な感じになります。「ああ失敗しちゃったね」という感想を受けます。けれども,僕としては,塩味が足りないよりは100倍マシです。(それぐらい塩味が抜けたパスタは不味い)

ジャストな塩加減ができさえすれば,そこいらへんの野菜で,そこいらへんのパスタをゆでて混ぜただけでも,結構おいしく仕上がります。本当です。これに,オリーブオイルも美味しくて,パスタのゆで加減も良ければ,まぁ,軽く感動できる程度まではいけることでしょう。

ちなみに僕が使っているオリーブオイルは,スペイン産のOLEO MARTOSというエクストラバージンオリーブオイル5L缶です。今4300円とかです。でかい。

なぜこのオイルを使っているかというと,とあるイタリアンのお店でこれを使っていることを教えてもらったからなんですね。オリーブオイルを選ぶ上で,「イタリア産」か「スペイン産」かという選択があるわけですが(もちろんその他の国のものもあるけれど),「スペイン産」の方が安定感がある,というのがその方の情報でした。そして,このオリーブオイルは,「この値段でここまで美味しいとは」という嬉しい5L缶なんです。値段で割ったら,相当なコストパフォーマンスがある商品です。人にもプレゼントしたりできます。(安くて使いやすいなオイル差し知ってたら教えて下さい)

大量に買っても,オリーブオイルは1年以上は持つし,けちけちせずにオリーブオイルを使いながら料理をできるのって楽しいものです。(高いオリーブオイルだと,つい量を加減してしまう貧乏性が発生)。

美味しいパスタを作って食べる時って,幸せ。そしてこの美味しい日本のイタリアンに沢山の貢献をしてくれた落合さんに感謝。いつかまた,ラ・ベットラ行きます。時々食べる美味しいパスタは,料理の感性を磨いてくれます。