次男は出世する

最近になってようやくコミュニケーションの重要性の認識が高まってきた。随分と遅いけれど、気が付かなかったよりはましだと考えるようにしている。世の中のあらゆる物事は一人の人が考えて始まる。しかし、物事を進めていくときには当然他の人との関係がスタートする。いかに確固とした自分を成長させていけるのかという段階を経て、必ず次に考慮するのは他の人との良い関係が構築できるか、となる。“人は一人では生きていけない”と本当によく聞く。

コミュニケーション能力!

これは生きていく上で相当重要なパラメーターである。小学校の授業に“会話”という教科をなぜ導入しなかったのか、28歳にして疑問を持つようになった。私がこれまで教えられてきたことは、“きちんとしなければいけない”、“言われたことを守らないといけない”、“無駄話は慎むように”、“宿題を出さなければいけない”、“間違ってはいけない”というようなことだった。

教えられることの中に、“上手に他の人と会話するように”、“そしてそのためにはこうするように”、ということはあまり教わってこなかったと感じる。何も考えないで色々な人と話し、話が続く人は”気のあう人”となり、続かない人は“あわない人”でよいと思っていたきらいがある。これはとんでもない事だと気がついた。これは本当に大事なことだ。ここには、とりわけ性格的な問題と、育った環境の問題が大きい。

ここで血液型の話はやめておこうと思うが、どんどん思いついた方向へ話を持っていくタイプの人同士が対面した場合、盛り上がりすぎたり、何にも会話が成り立たないことがあったりとむらがある。協調性の高い人の偉大さを知る。

会話が常に中心にあった家族で育っていれば、話し続けることには何の抵抗も無いことだろう。そして、会話を楽しむのが苦手な家族で育てば、相応な影響を受ける。何を切り出したらいいのか沸いてこなかったり、上手に相槌を打つのが下手だったりする。

そして、ここが今回のポイントになるわけだけど、兄弟の構成が大きく影響する。年の近い家族。長男はどう頑張っても甘えるのが苦手になり、責任感が強くなる。そして、次男は年上とのコミュニケーションが上手であり、したたかになる。末っ子は甘える傾向が強く、責任を持って動かすことの経験が乏しくなる可能性が高い。

もちろんこれらは断定できるものでもないし、様々なその他の要素が関係することであることはここでちゃんと書いておきたい。ただし、やはりこれらのことを頭に入れておいて前提とするのはとても意味のあることだと思う。

さて、ここで少しだけ角度を変えて、人が社会人になっていく時のことを考えたい。色々な組織やグループの中で自分の役割を持つようになっていく時のこと。そのとき人は、誰しも一度新参者となり、先輩や上司などとの接点が生まれる。学校の部活などですでに学んでいる人たちは多少得意なのかもしれない。どんな人も、目上の存在と一緒になるところからスタートする。

長男にとって、常に自分が率先してきて、自分の責任で物事を動かしてきていた場合、この状況が非常にやりにくいと感じる。任せられれば仕事をこなすのは得意なのに、目上の人と一緒に動こうとした瞬間ぎこちなくなる。そして、会社にいる限り、自分が社長にならない限り、ずっと自分の上司の存在がある。回りとのコミュニケーションがきちんとできるのかどうかは、きちんと与えられた仕事が果たせるかどうかと同じほど重要性があることに気がつく。

これは私が現段階で考えるぶっきらぼうな表現だけれども、100点満点で例えるとすれば、自分に与えられた仕事をきちんと果たせるかどうかの配点は50点だと思う。そして、目上の人間ときちんとコミュニケーションできるかが40点であり、年下とのコミュニケーションが10点としてみたい。

人とのコミュニケーションが苦手な場合、どれだけ与えられた仕事の能力が高くても、50点しか取れない。長男が年下とのコミュニケーションが得意だったら、60点は取れるかもしれない。しかし、目上の人間とのコミュニケーションの40点をカバーすることは、思いのほか重要なのだ。次男にとって、仕事そのものが30点しか取れなくとも、年上との交渉が上手であれば、合計70点は取れる。トータル的に見て、完璧長男タイプより、次男タイプの方が柔軟で評価は高いといえる。“世渡り上手”などと言われ否定的にとられることも多いが、大事なことをきちんとしている正当な評価が与えられるべきだと思う。

次男が出世しやすい、肥沃な土壌があることはごく自然なこと。しかし、私達はこのことを認識して、苦手分野をカバーし、得意分野を伸ばすことで、どんな人であっても充実した仕事やコミュニケーションを楽しめるようでありたい。そしてそれが自分のものにできればと思う。